第13回目は、タカラガイ上科ウミウサギガイ科のウミウサギ(海兎)です!
ウミウサギは紀伊半島以南、熱帯インド-西太平洋域に分布し、ソフトコーラルを捕食しています。海兎というかわいらしいネーミングのとおりウサギのように白く丸い形状をしていますが、海外ではこの見た目が鶏の卵のようであることからEgg cowrie shell(卵のタカラガイ)とよばれています。
本種はこれまで紹介してきたタカラガイとは異なり、一見するとこれといって華がないような印象を受けてしまいます。しかし、この一切の飾りがない純白にこそ本種の魅力が秘められているように感じます。陶磁器のような艶やかな白は、角のない殻の優しい丸さを際立たせ、つい手に取りたくなる衝動を駆り立てます。
一方で殻口内部は濃褐色で彩られています。雪国育ちの私は、このコントラストに冬枯れの大地を隠した白銀の世界を重ねてしまいます。 標本箱の「雪兎」は、晩秋の夜風と相まって私をセンチメンタルな気分にさせてやまないのです。
貝のおはなしは、今回でちょうど1周年を迎えました。連載当初は修士論文執筆の山場に突入し始めた頃で、息抜きにコレクションを眺めては貝への想いを綴っていたことをよく覚えています。これからも皆さんに楽しんでいただけるよう精進してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
2020.10 安田 風眞