No.16 ヒオウギガイ(檜扇貝)

新年あけましておめでとうございます。20211発目の第16回目は、イタヤガイ科のヒオウギ(檜扇)です!

 ヒオウギは房総半島~沖縄の岩礁域に分布しています。貝殻は黄色やオレンジ、赤、紫など多様かつ自然で生まれたものとは信じがたい極彩色で彩られ、初見では人工的に着色されていると疑ってしまうほどです。ちなみに、ヒオウギがこんなにも鮮やかな彩りの殻を持っている理由はまだ明らかになっていません。海中では足糸という繊維で岩に張り付いておりホタテのように泳ぎまわることはないようです。

 また本種は水産重要種であり、瀬戸内海沿岸域を中心に養殖されています。見た目のみならず味もホタテにそっくりで、ホタテよりも味が濃くおいしいという人もいるほどです。出荷前には殻表の付着物を除去するため、グラインダーで一つ一つ手作業で磨かれることが多く、生産者のヒオウギへの愛を感じることが出来ます。また、貝殻の色は遺伝することが分かっており、養殖個体は代々発色の良い個体同士をかけ合わせているため野生の個体よりもより鮮やかになる傾向が強いそうです。

研磨と言えば、ヒオウギの殻表には放射肋が走り、その上にびっしりと鱗状の突起(鱗片)が並びます。この鱗片を破損しないようにピンセットと柄付き針で鱗片を一つずつ慎重にクリーニングすると、ため息が漏れるほど美しい標本が出来上がります。しかしその果てしない手間たるや思い出すだけで顔を覆いたくなるのですが、不思議なものでしばらく時間が経つとまたやりたくなってくる、癖になる快感と達成感があります(そしてまた後悔します)。

16回目にして、ついに二枚貝の登場となりました。今後も巻貝を中心に執筆していく予定ですが、二枚貝の魅力も紹介できるようまずは私が二枚貝について勉強していきたいと思います!2021年も引き続きよろしくお願いいたします。

2021.1 安田 風眞

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