第24回目は、ソデボラ科のラクダガイ(駱駝貝)です!
ラクダガイは九州南部以南、熱帯西太平洋に分布する、ソデボラ科の本邦最大種です。生態は以前紹介したスイジガイやクモガイとよく似ており、大きな殻を引きずりながら海底の付着藻類を食べ歩いています。殻の背部のコブ状の膨らみをラクダになぞらえこの名が与えられたそうです。それならばクモガイのほうがラクダに近い外観をしているのではないかと思ってしまいますが、さらにその堂々たる重厚な姿をラクダに重ねたのかな、なんてあれこれ想像してみるのも楽しいものです。
本種の幼殻、その中でも特に小さい頃は肩が張り出すのとは対照的に下端にかけて極端に細くなる形状をしており、同科他種と比較した際に容易に判別することが出来ます。このアンバランスにも見える絶妙な造形美に、一時期強く心を惹かれていた思い出があります。現在標本が手元に無く、参考画像としてここで皆様にお見せすることが出来ない(※)ことが非常に残念です。※下の写真は貝殻の問屋さんの商品写真です。
ラクダガイはその巨大さと歩き方ゆえか、超老成個体の腹面は海底と擦れてボロボロになっていたり、棘が欠損していたりすることが多々あります。そのため、殻口が紫色を帯び始めたまだ傷が入らない亜老成個体が最も美しいように思います。かく言う私はまだラクダガイとの素敵な出会いに恵まれず、いつの日か…という憧れの一つになっています。
つい先日、研究室の後輩が送ってくれた写真の中に貝を「神の創造物」と称える一節がありました。シンプルながら強烈に胸を突く表現に、えも言われぬ心地良さすら感じました。どうも最近、自分が書く文章の“切れ味”が鈍っているように思えてなりません。貝への愛を研ぎ澄ますべく、美しい海へ足を運ぶべきなのでしょうか…。
2021.10.28
安田 風眞