第25回は、ニッコウガイ科のベニガイ(紅貝)です!
私は生きているものにはまだ出会ったことがありませんが、一度だけ砂浜で拾ったFD(Flesh Dead:死後間もない状態の良い死殻)の燃えるような真紅の輝きに、ベニガイの紅貝たる所以を見ました。砂浜に打ち上げられたベニガイのほとんどは退色して薄いピンク色をしており、これはこれで非常に美しいのですが「紅」の和名に疑問符が残ります。一度きりのあの赤さが目に焼き付いて離れず、学生の頃はフィールド調査の度に本種を探し歩き回ったものです。
そんな美しい標本を自分の標本箱に納めて安心したのも束の間、誰にもその退色を止めることは叶わず、ひっそりとその美しさは失われてゆきます(詳しくは第4回カノコダカラのおはなし参照)。変わらないものなど何一つ存在し得ない、そんな世の無常を感じる今日この頃です。
貝のおはなしも2周年を迎えました。変わらないものなどない、これは今の自分を振り返り感じることです。自分には似合わない都会での暮らしに抗いながらも変わっていくもの、それでも変わらないもの。貝への想いは忘れたくない、でもそう願ってしまう時点で気持ちが離れ始めているのか…?近いうちに、綺麗な海にでも行こうと思います。今後もよろしくお願いします。
2021年11月29日
安田 風眞