第30回は、ニシキウズガイ科のイチゴナツモモ(苺夏桃)です!
どうですか、イチゴナツモモという和名から溢れ出す、もう見なくても分かる確約された可愛らしさ!“個人的に可愛いと思う標準和名ランキング2022”トップ3に堂々ランクイン中の本種は遙かインド洋の東アフリカに分布しています。日本近海には近縁種のナツモモが生息しており(こちらはまた別の回で紹介予定)、かなり大雑把に言えばナツモモをイチゴ風のカラーリングにするとイチゴナツモモになります。殻表は幾何学的に塗り分けられた緻密な顆粒状の彫刻で覆われ、丸みを帯びつつも均整のとれたシルエット、そして概ね殻長20mm未満という絶妙なサイズ感。神は二物をも三物をも与え得るのかと、机の上の標本を転がしながら何やらやり場のない嫉妬にも似た感情さえ抱いてしまうほどです。
今日のようにケータイやSNSが普及する以前の時代には文通という文化があり、顔も知らぬ想い人の名をなぞっては夕日に胸を痛めたんだとか。初めてイチゴナツモモという名前を聞いたその日から、未だその幻影を渚に追うのは同じ感覚でしょうか。この写真の個体は先日、たまたま立ち寄った北海道は蘭越の道の駅で手に入れたものです。思わぬ出会いに喜びつつ、やはりいつの日かこの手で採集してみたいと憧れが募るばかりです。
2022.5.31 安田 風眞
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