No.31 ゴホウラ(護法螺)

31回目は、ソデボラ科のゴホウラ(護法螺)です!

ゴホウラは私が愛するソデボラ科の大型種であり、奄美諸島以南、熱帯西太平洋に分布しています。同科の中では大人しめのデザインではありますが、白混じりの褐色の色合いに光沢を帯びた殻表、そして何よりその存在感が魅力的な貝です。老成個体の大きく張り出した重厚かつ堅牢な外唇はまさにソデボラの名を体現しており、見事の一言に尽きます。特に美しい個体ではこの外唇と内唇が鮮やかな飴色に染まり、様々なアングルから楽しむために複数個揃えて飾りたいという危険な欲望が鎌首をもたげてきます。

また本種の殻は弥生時代には有力者の装飾品であった貝殻製腕輪の原料として珍重され、北海道を含む日本各地で出土していることから奄美・沖縄諸島との交易があった証となっており、人類史の観点からも非常に重要な貝です。ちなみにゴホウラの貝輪出土地の一つである山口県は下関市の土井ヶ浜人類学ミュージアムの庭には腕輪に加工されている途中段階の巨大なゴホウラのモニュメントが鎮座しており、人工物といえども一見の価値ありです。

この博物館から程近い土井ヶ浜や角島の蒼く透き通る海、眩しいほどに白く輝く砂浜と首筋を焦がす太陽。砂にまみれ、波に揺られ、二人乗りのバイクで沈む夕日を追いかけ国道191号線を走った何気ない日常が、いかに特別でそして美しい時間だったことか。夕日の見えないこの街で迎える3度目の夏が、今年もやってきます。

2022.6.30 安田 風眞

ー商品ページー