No.32 ボウシュウボラ (房州法螺)

32回目は、フジツガイ科のボウシュウボラ(房州法螺)です!

ボウシュウボラは大きな個体では殻長250mmに達するフジツガイ科の大型種で、房総半島・山口県以南、フィリピンに分布しています。本種はホラガイの近縁種のため殻の形状や生態も両種間でよく似ており、ホラガイがオニヒトデの天敵であるのと同様に本種もやはり棘皮動物を捕食しています。また殻表の侵食が少ない個体はクリーニングすると控えめながらも光沢を帯び(体層は輝きを放つ強い光沢)、肩上に規則正しく並んだ柔らかいシルエットの結節がその美しさを際立てます。そしてこの濃褐色に強く彩られた殻表と純白の殻口とが鮮やかなコントラストを成し、その大きさと相まって非常に見ごたえのある貝です。

本種は房総半島以南の太平洋沿岸の市場では一般的な貝で、その外見から「ホラガイ」の名前で流通しており、味は良いと聞きます。ただし専門で漁獲されているというよりは、イセエビ刺し網漁の外道として水揚げされているというイメージが強いです。

大学院生の頃、ボウシュウボラを求め唐戸市場に通っていた時期がありました。しかし下関では流通量が少なく空振り続きで肩を落としていると、研究室の後輩が帰省先の愛知県からどっさりと調達してきてくれました。この標本(写真の個体)は、そんな学生時代の大切な思い出の一つです。余談ですが、ボウシュウボラで笛を作成する野望を長年抱き続けているのですが、いざ螺塔にグラインダーの刃を当てるとたちまち惜しくなり、未だ実行できておりません。完成の暁には、必ずや貝のおはなしで皆様に報告いたします。

2022.7.29 安田 風眞