第35回目は、ソデボラ科のヒメゴホウラ(姫護法螺)です!
ヒメゴホウラは奄美諸島以南、熱帯西太平洋のサンゴ礁や岩礁に分布しています。ゴホウラと比較すると螺塔と体層がスラリと上下に伸びるスリムなシルエットと、殻長120mm程度の小ぶりなサイズ感はまさに”ヒメ”を体現しています。外唇上縁には4本の指状突起が発達し、殻頂から連なり凹凸に富む魅惑のラインを形成します。またゴホウラほどではありませんが、やはり外唇は肥厚し、そして実にソデボラらしく優雅に広がります。褐色の地に白い模様が入った殻表は光沢を放ち、本種の美しさを際立てます。優しい丸みを帯びた体層の腹面には雪化粧の山脈を彷彿とさせる独特な模様が描かれ、ここからガラスの如き透明感の濃褐色で塗られた殻口まで、まるで渓谷のように一気に落ち込み、吸い込まれるような奥行き感を演出します。本種のみならず、なぜこんなにもソデボラは魅力に満ちているのでしょうか。見つめるたびに新たな魅力に気が付くほどに、心を奪われます。
写真の個体は、大学院生の頃に貝殻の問屋さんの店舗で直接購入したものです。棚には美しい貝殻の数々が所狭しと並べられ、ついつい買う予定のなかった貝までカゴに入れてしまいます。小型〜中型の貝はガラスの水槽(水は入っていませんよ)の中に収められ、色彩豊かな様も相まってまるで幼い頃に映画で観た海外のお菓子屋さんのような素敵な光景が広がっています。貝殻がお好きな方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
2022.10.31 安田 風眞