第37回は、イモガイ科のハデミナシ(派手身無)です!
ハデミナシはインド洋に分布する大型のイモガイです。深場に生息することから、やはりかつては採集難易度が高く希少な貝の一つでした。その珍しさと美しさから「Glory of India (インドの栄光)」として名高い本種は、前回登場したイモガイの王様・ウミノサカエイモに肩を並べる本科の美麗種のひとつです。ウミノサカエイモのマッシブなボディラインとは対照的に、極端にスリムなハデミナシの殻表はもはや言うまでもなく光沢を帯び、その名の通り絢爛たる装飾で彩られます。濃褐色の殻表に広がる大型の白い三角斑は荘厳なヒマラヤ山脈やチベット高原を連想させ、煌びやかさの中に確かな気品を漂わせる佇まいと、かつての希少性とが相まってまさしく“インドの栄光”を体現した本種こそ、イモガイの女王にふさわしいのではないでしょうか。
余談ですが、貝好きの友人に標本を見せたところ、意に反して私が愛するウミノサカエイモよりも美しいとのこと。確かに両種を見比べるほどに甲乙つけ難く、悔しくも私の手持ちのKing of ConusではGlory of Indiaを圧倒することは叶わず・・・。しかし、こういうひと時が堪らなく楽しく、これだから貝蒐集はやめられないのです。
気が付けば2022年もあっという間に幕を閉じますね。今年も本当に色々なことがあった激動の一年間でした。果たして来年はどんな年になるのか…。皆様にとって素晴らしい一年となることを祈るばかりです。4年目に突入した貝のおはなしをこれからもよろしくお願いします。
2022.12.27 安田 風眞