No.39 リュウキュウアオイ(琉球葵)

第39回目は、ザルガイ科のリュウキュウアオイ(琉球葵)です!

リュウキュウアオイは奄美群島以南、東南アジア、北オーストラリア、インド洋に分布する二枚貝です。シャコガイ類と同様に外套膜に褐虫藻が共生し、褐虫藻が光合成によって作り出すエネルギーを利用している「太陽を食べる貝」の一種であり、分布域が物語る通り南国の強烈な太陽光と透き通る青い海でしか暮らせない貝です。本種はそのかわいらしい外観から、いわゆる”ハートシェル”としてご存知の方も多いのではないでしょうか?一方で標準和名はハートではなく葵の葉になぞらえたネーミングになっています。

本種はアサリやハマグリのような身近な二枚貝と比べると殻が縦方向に扁平しているため、殻は特有の開き方をします。例えば平面にハマグリと本種を並べて置くと、前者は垂直軸方向に、後者は水平軸方向に開くのです。気になる方はぜひ現物で確認してみてください。また殻表は細かな彫刻、外縁部は規則正しく並ぶ小さな棘で装飾されます。さらに殻頂側からは広げた翼を前で揃えた水鳥のような優雅な曲線美が描かれ、様々なアングルからの観賞にも耐えうる大変美しい貝です。そして純白のもの、赤い斑点が散りばめられたもの、黄色や桃色、褐色を帯びるもの等、殻表の色彩は個体差に富み、コレクション性が高いのも本種の大きな魅力の一つでしょう。

先日、公開25周年記念でタイタニック3Dリマスター版が限定上映されました。本作は皆さんご存知の通り「Le Coeur de la Mer, The Heart of the Ocean(碧き海の心、碧洋のハート)」と名付けられた伝説のブルーダイヤモンドをきっかけに物語が大きく展開していくのですが、リュウキュウアオイこそ貝界のThe heart of the oceanで間違いないでしょう。かく言う私はタイタニックの大ファンであり、これまでDVDで数えきれないほど観てきたにもかかわらず、やはり言うまでもなく映画館での体験は格別でした。これは貝のおはなしにも通ずるもので、壁しか見えない住宅街の狭いアパートではなく、窓の外に広がる青い海を眺め、時折潮の香りを感じながら執筆できたらどんなに素晴らしいことだろうかと、改めて強く感じた次第です。

2023.2.28 安田 風眞

  

-商品ページ‐