No. 63 ボタンウミウサギ(釦海兎)
第63回目は、ウミウサギガイ科のボタンウミウサギ(釦海兎)です!
ボタンウミウサギは沖縄以南、熱帯インド-西太平洋に分布する殻長30mmほどの巻貝です。ソフトコーラルに付着し、これを捕食して暮らしています。殻の形状からお察しの通り、科こそ分かれますが「タカラガイ上科ウミウサギガイ科」に属する、タカラガイの仲間になります。
本種が生時に殻を包む外套膜は白を基調に大小の黒点が密に散りばめられた奇抜で毒々しいルックスですが、優しく指で突くと軟体部が収縮し、たちまち可愛らしい貝殻が姿を見せます。純白の殻表はマットな仕上げで、シルクのような落ち着きのある光沢を帯びます。殻口はまさしくタカラガイらしい形状をしており、外唇には細かい歯が刻まれます。そして両端はピンク色に染められ、もうこれだけでも十分に魅力的であるにも関わらず、そのうえ和名の通りボタンのような丸いデコレーションまで添えられる始末。手のひらの上でコロコロと転がし、目線の高さまで持ち上げ端から眺めれば、いよいよ両手両足を突き出し跳ね回るウサギに見えてきませんか?だって尻尾まであるんですよ!ふとした瞬間に標本箱の中から跳ね出してしまいそうな本種は、見ているだけでドリーミーな想像が掻き立てられる実に楽しい貝です。
ウサギ繋がりの余談をひとつ。猟期も終わり、ここ最近はエゾユキウサギ探しの雪山トレッキングにのめり込んでいました。先日も森の中で雪をかき分けていると、ついに出会ってしまったのです。かつてアイヌ民族が“山の神 キムンカムイ”と称えた日本最大・最強の陸棲動物に・・・。真っ黒で巨大な体に金色の頭で、大地を揺るがせ駆けるその姿は神々しく、震え上がるほどに恐ろしくも実に美しい生き物でした。これからも万全の対策と適切な距離を保ちつつ、北海道の大自然を満喫したいと思います。
2025.2.27
安田
風眞